もっちもち

うふふ

書を捨てよ旅に出よう

アヤワスカアナログ体験記加筆修正



まず、私は普段服薬はルネスタ程度。眠剤以外の薬服用経験はほんの少し。そして酒にも弱く代謝が早い。それがキマるきっかけだったのかなーと思った。

アカシア5g程度とクエン酸を半サジ、400mlの水で煮詰め、その最中にオーロリクスを服用。ちなみに煮詰めている時に上履きのゴムのようなにおいがした。ワンカップ分になるまで中強火で煮詰め、コーヒーフィルターでこしたお茶にオーロリクスを砕いて入れて冷まして完成。

怖かったのでその3分の2くらいの量を飲み、本当に効くのか〜?と半信半疑になりながらもベッドに横になり、目を閉じる。

少し時間がたつと、目を閉じた次回の真ん中に虹色の線が見え始める。見間違いか思い込みだと思っていた。
ずっと見てたら虹の線が右上とかにも出始めて、黒い点のようなものも見え、動いているように見え始める。「おや?」と思っているとここで吐き気を催し、トイレに向かうと歩く感覚がおかしくなっていることに気づく。
力が入りにくいような。そして、蛍光灯のランプがやけに黄色く見えるのを不思議に思いながらトイレに入り、私は吐くのは苦手なのでその時は吐かなかったが、トイレの壁紙のもようが動いていること、白いはずのトイレットペーパーが青く見えていることに気づいた。1つ1つ、異変を発見していくのがとてもリアルなかんじがした。

それにびっくりして部屋に戻ると、普段なら気にならないカーペット模様が、そしてその中でも青色がいつもよりはっきり見え出して、おかしいなと思って目を閉じたらもうそこは幻覚世界になっていた。サイケデリックというのだろうか、
黒背景にネオンカラーのピンク、赤、緑、青、紫の有象無象の図形がズラーっと流れていったり、黒背景の小さないくらみたいなのが波打ちながらたくさん迫ってきたり、幽霊のような人の顔が浮かんだり…
そこで「怖い」と思ったから結果バッドに入ったのかも。
私はアカシアに関する前知識が少なく、「シャーマンが使う幻覚が見れるお茶」という認識しかなかったので。
よもや自分に効くとも思ってなかった。
だから、突然の事態に混乱した。
あと、目を閉じた時の視界(っていうのは変かもしれないけど)がやけに大きい。
普通目を閉じると目を閉じた部分の暗さだと思うが、それがなぜかものすごく広い。
広くて、縦横無尽に模様や色や形や謎のイメージが動き回り、変化をし続ける。宇宙みたいって表現するとチープだけど、本当にそんなかんじりチカチカするし吐き気も倦怠感もひどく、「怖い」と言って目を開けた。とにかく怖いと思ってしまった。

目を開けると、開けたときの視界も変わっていました。壁や天井に模様が浮かび上がり、ベットシーツの陰影が異様にはっきりしている。おまけに動く。色の見え方も普段とまるで違う。青っぽかったり黄色っぽかったり。

心配そうに様子を伺っていた恋人が、「怖い」と言う私に「楽しいって思って!」としきりに言ってきていたが、後なってその重要性がわかった。
楽しいと思わなければこの幻覚は楽しいイメージにはならないということだったのだろう。そのときはいっぱいいっぱいで楽しいと考えようとしても、一瞬で幻覚の強さの恐怖に持っていかれてしまう。このとき楽しいを維持できなかったからバッドになったのだと思う。
大丈夫?と手を握ってくる恋人の手がものすごく熱く感じる。自分の手がものすごく冷たく、ぷるぷる震えているのがわかった。
自分の手にも恋人の手にも模様が浮かび始め、恋人の顔がなんだか違う風に見えた。
びっくりして目を閉じても目を閉じた世界はギラギラのチカチカ、手で目を覆い隠しても同じことで、目を開けてもまた視界がおかしい。逃げ場がない、と感じた。

するとまた吐き気が現れトイレに行こうとするが、身体の感覚が変になり、力が入らない。恋人が抱えて連れて行ってくれるが、温度や触れている感じ方も遠近感もおかしい。
なんというか、抱えられているのが自分ではないような感覚だった。
一枚フィルターがあるみたいな。それでいてやけに近く感じるような。目を閉じても開けても続く幻覚に苛まれ、歩かせてもらいながら移り変わるいつもの風景が幻覚にめちゃくちゃに荒らされているのを眺めながらトイレにたどり着く。
嘔吐や排泄の音を恋人に聞かれたくないという意地だけは失わず、離れた場所にいてくれとお願いする。そしてトイレの個室にこもり、へたりこむ。私は吐くのは得意ではない。酒の席でも滅多に吐かないし、吐きそうになっても我慢する。
だが、アヤワスカによる吐き気はそんな我慢できるようなものではなかった。吐き気を耐えていたところでトイレの模様、便器、床の色彩がぐちゃぐちゃになってるし、動いている。目を閉じても例のネオンカラーのチカチカ。
迫り上がるような吐き気に促され、喉に指を突っ込んでなんとか嘔吐する。一度嘔吐できたら二、三回吐けた。「浄化」というらしいがどうなのだろう。でもたしかにここまで耐えられない吐き気はなかなかない。汚いはずの自分の吐瀉物がキラキラとして見えたのには少し笑えた。
吐き終えて便座に座り、目の前のウゾウゾと動いている壁の模様を見ていると、目が開いている状態なのに、黄色い光る線で模様が浮かび上がり始めた。触っても消えない。魔法のようだった。魔法ってもしかしたらキマってる人間が考えたのかも。換気扇の音が近い。ゴーゴー大きく聞こえる。
目を閉じると幾何学模様に混じって、平面の鉄でできた門の黒とピンクのシルエットがあり、ずっと見ていると人のシルエットが出てきた。アニメシアターのようだった。もう少し見たかったが、苦手な黒と赤のいくら的物体の集団がまた下から迫ってきたから目を開ける。
自分の身体を見た。黄色い線の模様が浮かんでいる。もしや、と思って左腕を見た。わたしの左腕には、手首から肘にかけて無数の自傷跡がある。10年前のものだから白く浮かんでるだけなのだが。
その自傷跡が、動いている。エスカレーターのように上に下に。愉快なのか驚きなのかわからない感情になり、吐けた爽快感からか若干調子を戻し、ふらつきながらもトイレをでて口をゆすぎ、恋人にそのことを報告した。このときは少し愉快だった気がする。
ぐにゃぐにゃ回る視界の中で、まさかここまでとは思わなかったなぁとか、なんでわたしがキマっちゃうんだろうなぁとかそういう他愛もない話をした気がする。恋人に自分が見ている風景を伝えたくて目を閉じてサイケを見るが、どうもうまく伝えられない。目を開けると恋人の顔に模様が浮かんでいるのが面白いと感じた。

二度目の吐き気を覚え、再びトイレへ向かう。もう自力では歩けなくなっていた。全身の感覚がおかしい。この辺りからバッドに入っていたと思う。もう吐くものも少ないのに嘔吐。吐瀉物にたくさんの目がある。笑われていると感じた。
ただのトイレの個室なのに、膨大な空間であるように感じる。壁に曼荼羅のような模様が見える。自分の身体を失ったような錯覚があった。
もはや立ち上がる力もなく、恋人を呼んだ。
幻覚でぐにゃぐにゃな視界の中で、心配した恋人がドアを開けた。
このタイミングだったかはわからないが、恋人が抱きかかえてくれる温度が熱く、離れていた現実感を得、恋人が優しくなだめてくれるも、しかし幻覚に襲われ続ける恐怖に突然感情のタガが外れて「怖い」と泣き始めてしまった。急に感情が暴発して突然涙が出るかんじ。ちなみにこのあとのロードーズでも泣いた。私はお茶をやると泣上戸になるのだろうか。ちなみに酒で泣上戸になったことはない。

だが、怖いと泣いても涙が滲むとそれがさらに光の粒になり幻覚を増長させる。もはや眼に映るものも目を閉じていても全てが動いている。色と形が暴力となって襲ってくるかんじといえる。脳が壊れると思って、ひたすら「助けて」「なんで私なの」と心の中で叫んでいた。
恋人はルネスタで落とそうと提案してくれたが、吐き気と酩酊感から何かを飲める状態ではなかったので断ったら、恋人はバッド対策にプリザーブドフラワーを持ってきてくれた。

なんと、とても驚くべきことに、全て動いている視界の中で、花は一切動かなかったし、模様も浮かんでないのだ。それどころか、青い薔薇の青さが非常に美しく感じた。こんなに美しいものがあるのかと感動した。
完全に「おはなきれい…」状態だった。少し冷静さを取り戻し、ベッドまで連れて行ってもらい、花を見ながら寝そべる。身体の感覚がなく、なんども訪れているはずの恋人の部屋が別の空間のように感じた。色もそうだが、遠近感がおかしい。異様に広く感じるのだ。ものの見え方が変わっていた。
しかし、まずバッドとかバッド避けとかの意味をわかってなかったのがまずかったのか、もう遅かったのかわからないが、それでもバッドは終わってはくれなかった。

花を見ていても、花以外の、例えば額縁や壁に模様が入り、うごめくのは変わらないし、吐き気や身体の震えがひどく、それを見ないようにすることができなくなっていった。目を閉じると強烈なネオンカラーの線や丸、図形たちが踊る。ここくらいから目を開けている状態での幻覚がはっきりしてきて、シルエット状態の下下らしい色合いのムカデのような虫たちが視界の隅に見え始める。
ふとバイトのことが頭をよぎった。私はいわゆる夜職をしており、男性相手の接客のバイトなのだが、今日はバイト行けないな、と思った瞬間蛇や女のシルエットやが現れ、視界を這いずり回られた。
私は、なんとなくだが蛇は男性のイメージなのではないかと思う。私は根底として男性嫌悪がある。男が嫌い、ということではなく、いわゆる家庭環境や過去のトラウマ、そして皮肉にも自分の仕事内容からか男性性というもの対する深層心理での不信感や憎悪がある。だから蛇としてイメージ化されたのではないか。
そして高い女の声のネガティヴな幻聴が聞こえ始める。「生きててよかったの?」「生まれてこなければよかった?」「最低な人間なのにね」などといった。
幻覚と幻聴に苛まれながら、「やめてくれ」「助けてくれ」と思った。恋人に泣きながら「助けて」と言った。恋人は落としのためのワイパックスを用意してくれたが、混乱と吐き気とでやはり飲むことができない。身体が何も受け付けない状態だった。
最早寝転んでいても楽にはなれず、視界が壊れてしまったので花も効果が薄い。再び吐き気と尿意を催し、トイレへ向かったが、先ほどトイレに行くときとはもう何もかも違う。現実ではない世界を見ているようだった。目を開けていたのか閉じていたのかもわからない。
なんとかおしっこをしようとするが、視界全ては幻覚になり、謎の牧場や牛や、女の子のシルエットや仏、百鬼夜行のようなイメージが浮かんできて、しかも体の感覚も曖昧なためなかなか排尿できない。
ようやっと出せたかと思ったら、目の前に大きなまるっこいボトルが現れ、おしっこを出した量と同じだけ液体が満たされていくのが見えた。後々調べると「ビジョン」とか「イメージ」とかいうらしいが、まさかおしっこがビジョン視できるとは…
吐くために便器の前にへたり込み、また少し吐く。吐瀉物がなぜか白っぽい綺麗なものに見える。そしてトイレの個室を見渡すが、そこはもういつものトイレではなく、青を基調とした幾何学的な模様をした亜空間になっていた。換気扇の音がかなり大きく聞こえる。それに混じって、なぜか民謡?のような歌が聞こえてきた。
もう肉体と空間の境界がわからない。このトイレの個室がやけに広大で、自分がどこにいるのかさえわからない。人間界ではない場所へと、これがいわゆる「トリップ」とよばれるものだったのだろうか。なぜ「トリップ」なのか意味がわかった。
別世界に旅をするとはそういうことだったんだと今にして理解した。
ここはどこなんだ、これはなんなんだ、戻りたいと思っていたが、戻りたいと考えていたということは、自分はもう現世にはいないようなものだと思っていたのだろう。
幽体離脱に近いような。それでも肉体の寒気や嘔吐感の苦しみはある。幻覚や幻聴はいっそう激しくなる。仏のような様々な開眼幻視、自分の体に浮かぶ謎の模様が見える。目を閉じても続く色彩の嵐。バッドじゃなければ、そして体の不快感さえなければ楽しむことができたんだろうな、と今にして思う。「もう解放してくれ」と思い、死すら頭をよぎった。このまま死ぬんじゃないか、救急車呼んだほうがいいのか、と思った。「戻りたい」「戻りたい」と心の中で念じ続けた。それでも戻れない。
もはや感情は怒りになった。恋人が扉をあけてワイパックスを持ってきてくれたが、やはり飲める状態じゃない。

もう一度吐けるかチャレンジしようとしたが、吐く気力も起きず、ただぼんやりと便座や便器があるだろう場所を見ていたが、あることをふと思った。「こんなめちゃくちゃにされてるけど、こんなの、ただお茶飲んだだけじゃん」と。かろうじて動いた右手でシッシと払うような動作をしながら、

「こんなものはただのお茶だ!」と心の中で叫んだら、なんと一気に幻覚が晴れた。驚くほどのスピードで視界がもとの、「いつものトイレ」に近づいていく。幻覚も少しずつ消えていく。アニメみたいだな、と思った。

ほっと安堵して、恋人を再び呼ぶ。「戻れた!」と報告すると、恋人もすごく安心した様子で、「よかった〜」と言う。

視界は戻ったが、やはり身体の感覚は変わらず、異常に体が冷え切っており、震えも止まらなかった。
まだ立てなかったのでその場でへたりこみ、口をぬぐうためにトイレットペーパーをひっぱる。トイレットペーパーをただ引っ張ってるだけなのに、やけにその動きが明確に見える。なんというか、細かい動きがやけに鮮明に見えた。
恋人が持ってたスマホの画面がやけに色鮮やかな光を放っていた。そして驚くべきことを知ることになる。時間を聞いた。

1時間くらいしか経過していない。
私の感覚としては、3時間、それよりもっとずっと長かったように感じたはずだった。それが一時間くらいしか経ってないことにめちゃくちゃ驚いた。たしか効果は3時間くらいと聞いた気がするが、本当に三時間まで幻覚が終わらなかったらどうなってしまっていたのだろう。

恋人が一息つくためにタバコを吸うと、なんだか匂いがいつもと違うように感じた。ゴム臭いような。嗅覚もやられている。そしてようやく吐き気も落ち着き、水をもらうと、なんだか水が妙に甘い。甘すぎる。砂糖入れたのかってくらい甘い。味覚もやられていたとは思わなかった。
つまり、私はアカシア茶によって五感すべてを狂わされてしまったのだ。
(余談だけどテニプリで幸村がこんな技使えるよね)

ワイパックスを4錠飲み、少しずつ身体の感覚も取り戻し、トイレットペーパーを見ると青く見えていたトイレットペーパーが白に戻っていてホッとした。
まだ少しふらつきながらも部屋に戻る。もう幻覚はなくなったようだ。ワイパックスすごい。
恋人も救急車呼ぶのを考えたようで、戻れてよかった…と再確認。

少し身体のだるさはあるが、ちゃんと歩けるようになったのでタバコを吸いにいくと、タバコがものすごくおいしく感じた。終わってみると、かなり万能感がある。人間関係なんてどうでもよくなったり、いわゆるハイな状態になっていた。
あと、視界がやけにクリアに見える。特に植物や、
マンション、大型パーキングの骨組みとか、そういった無機物のものが遠くのものでもやけにクッキリ見えるようになったような気がする。これはアカシアを飲んだ後数日間続いた。今もそうかも。

後から考えれば、恋人からすればいつもの部屋で私が錯乱しているシュールな光景だっただろうなぁ…めちゃくちゃ心配かけてしまって申し訳ない。