もっちもち

うふふ

姉について

姉のことをずっと憎んでいた。

小さい頃から気の強かった姉は私のことを妹として扱うこともあったけど、当人が定期試験や受験勉強に差し掛かるときまってわたしを殴ったり、5人家族にしてはやけにせまい家で2人きりになると「なにも物音を立てるな」とだけ指示して、それから部屋に篭り、わたしが物音を立てたらひどく怒ったりしていた。

姉は昔から頭が良かった。いまでもたくさんの本を読んだり論文を書いたりしているから勉強が好きなんだと思う。わたしとは全く違うタイプで、頭も良くてスポーツもできて賢い高校に行って賢い大学へ行って、大学では好成績を残しつつも趣味で金を使い込んでカード地獄に追い込まれ、当時高校生だったわたしはどんどん姉のことを憎んだ。自分をいじめた上に優秀で親からもちやほやされて趣味に楽しんでる姉の存在はわたしの根底のなにかを捻じ曲げるには充分すぎるほどだった。我慢と劣等感と恐怖で文句をうまく言えないということが及ぼした影響からか中学生の頃にはリストカットをする癖がついた。いわゆる天才と凡人で、それが血を分けた姉となると余計に苦しい日々を送った。おそらくADHDありがちの無駄な完璧主義が災いしてかわたしはだいたいのことが「器用貧乏」で終わる。好きなことはある程度まではできる。けれど他人と自分を比較して少しでも劣等感に自分が負けたらすぐに投げる。他人のことを心の底ではいいなぁ、普通の家庭普通の経済環境普通のきょうだい。自分の中に誰にも見せられない昏い昏い醜い穴があって、マグマのようにふと沸きたつそれを抑え込むような日々だった。

だから接客業のバイトは実は嫌いではなかった。にこにこしてる内心で「ああ、こいつよりはまだわたしはまともな人間だ」と思って優しい気持ちになれる。なんとも最低な話であり、そんなこと考える人間がまともかと言われたら全くそうではないのだがそれで精神を保ってたのだからそれはそれで認めるしかない。

 

劣等感からくる中途半端がどんどんひどくなって、それからはTwitterの人々にもよく言ってるように大学に浪人で入りはしたものの休学や留年を繰り返し、気づいたら大学8年生になっていた。学費は自分でバイトして払ってるからいいだろう、というとんでもない傲りと、自分が発達障害傾向であり、その併発でいわゆるメンヘラであるという現実を認められなかった、誰も指摘できなかった、などの理由はあれど今となっては全てが遅く、「中退届けも出さずに学費未納で除籍」という最悪の事態に陥った。これでのうのうとTwitterライフをエンジョイしていたのは自分の強みでもあるとも思う。危機意識が低いことは裏を返せば楽観主義であるということで、裏を返すということはだいたい屁理屈であり心持ちの問題であるという話はここでは省略する。

 

文章を書くのがわりと好きなので話は逸れてしまったが、11月に父親の癌が発覚した。

(途中)

純粋な君の全ての為に私の力は全部ふさがれた。 昨日と同じくらいにその事を知っている。

ブログを書こうと思って普段は気にすることがない今日の日付を見てやっと気がついた、驚くことに3ヶ月が経つ。
人間の脳や月日の経過というのは非常に都合がよくできていて、忘れたいと思うことは忘れさせてくれるらしい。

ただ、あの頃の自分だけはいつまでも消えることができずに閉じ込められてしまったようで、わたしはあのカーテンのない、ブラインドで日を閉ざす隙間風と朝日を遮ることができない小さな部屋の光景をいまでもくっきりとまぶたの裏に思い描くことができる。
よくお酒をこぼした変な柄のカーペット、血がついたソファのカバー、並べた2人のテレキャスター、2人でよくタバコを吸ったこたつ、几帳面に拭かれた机の上に置かれたのはわたしがあげた灰皿。

あの部屋は全てもうあの頃のあとかたもなくなってしまっているのに、その終わりを見ることのなかったたわたしにはあの部屋はまだそのままの姿で思い描くことができる。わたしだけが取り残されたまま、ひたすらに時間が過ぎていく。
幻のように幸福で、叫びたくなるほど残酷な日々。
全てが色鮮やかに感じた。永遠を信じてしまいそうになるほどに、その想いが幸せであればあるほど、痛みに変わる代償を思い知らせたのもまたあの人だった。
短すぎた永遠のような日々は抱えて歩くには重く、過ぎていく時間の力を信じることもできなかった。だから置き去りにすることにする。

生い立ちの話・リストカットをしていた頃

わたしは兄と姉の三兄弟で育った。後で知ったが、さらに上にも兄がいたらしいが、養子に出したとか父の連れ子だったとか、会ったことはないのでよく知らない。
本当に小さなころは景気も良く、父親はデパートで働き、母親はパートをし、共働きだが仲良く暮らしていた。けれどそのデパートは倒産し、父親は職を失った。幼かったからよくわからなかったけど、大変なことになったということだけはわかった。
貧乏。幼い私でもわかるほどに生活の質は下がった。そもそも三兄弟にしては狭いアパートに住んでいる時点でそうなんだろうとは気づいていた。もともと収入も高くはなかっただろうし、三兄弟だからそれは大変だったろうと今になってはわかる。
私の家には自分の部屋というものがなく、私に与えられているスペースはたった一つの勉強机だった。友達の家に遊びに行くと、みんな自分の部屋があって、たくさんのゲーム機があって羨ましかった。大きなマンションや一軒家に住んでる子もいた。なんでだろうと思ったけど、口に出したら怖くて、何も言わなかった。
私には長女の姉と次男の兄がいた。長女の姉は気が強くて頭も良い。だが、後で聞いた話ではあるが、母親は姉に対しかなりのスパルタだったらしい。それが原因でなにか恐ろしい事件があったらしいのだが、それに母には関してはいくら聞いても話してくれない。また、これは知り合いから聞いた話だったが、小学校の時姉は友達同士で「セックスごっこ」というのをしていたそうだ。そして事実、私の小学校の親友の弟と、別の友達の妹を母親の下着をつけさせて、小学1年や2年そこらの私たちの前でセックスごっこをさせたのだ。今思うと、恐ろしいことだし、姉がなぜそうだったのかはわからないが、彼女も家庭のイザコザで苦しんでいたのかもしれないと今になってわかる。小学一年生の頃、私はクラスの担任の男の先生に父親のようによく懐いていた。その先生にプールの授業のあとの放課後、ほかに誰もいない教室で「靴下がない」と言って一緒に探してもらおうとしたら、服の中にあるかもしれないと言われ、服を脱がされ全身を弄られたことがあった。当時はどういうことかわからなかったが、「このことは内緒だよ」と先生に言われたことを強く思い出すし、年頃になって思いさして、意味がわかるようになって、ものすごく気持ち悪くなった。父親の浮気なども重なり、自分も恋人を作るようになった今でもどこか奥底で異性を軽蔑し、不信感を抱いてしまう。
姉は私が末っ子で、厳しくしつけられず甘やかされているのが気にくわないようで、しばし私を殴ったりつねったり顔に引っ掻き傷をつけられたりしていた。抵抗しても負けてしまうとわかってるからできない。言い返しても姉の方が高圧的でヒステリックに逆上すゆので逆らわえないから、私はずっとされるがままだった。姉が勉強のために部屋にこもったら、私は勉強机に座ったまま音を出すことを許されず、本を読んだり古いゲームボーイを音を消してやったり、絵を描いたりしてすごした。部屋といってもふすま一枚隔てただけだったから、少しでも音を立てたら「うるさいんだよ!!集中できんやろが!」と怒鳴られ叩かれる。母親は姉と兄は勉強があるから仕方ないでしょ、としか言ってくれない。
父親はその頃、ニューウェイズというところで働けることになって、家族全員喜んだ。健康食品やシャンプーなどの商品を扱い、動物実験反対を謳い文句にしているというかんじだったのは覚えている。だが、これがさらなる波乱となった。そのことに関してはあまり覚えてないが、もちろんそれはネズミ講だったのだ。このころから、母親と父親が子供たちが寝た後になにか深刻な話をしていたり、喧嘩か何かで父親が酒をたくさん飲んで怒り、家を出て車の中で寝ようとしたのを、私が泣きながら家に戻ってと懇願したことがあったり、なんとなくどんどん家の中がおかしくなっていってると感じた。だが、幼い私は優しい父親が好きで、いつも父親と遊んでいた。母と姉、そして私と父親でなんとなく対立関係のようになっていた。
家が貧乏だから、私はずっと自分の服が買ってもらえず、ずっとお下がりを着ていた。クリスマスや誕生日も、高いものなんかねだらなかった。親戚周りもそんなにしないので、少ないお年玉でゲームカセットを買ったりしていた。周りの子はお年玉で十万ももらったりしていて、いいなぁ、と思ったけど、貧乏でもそれでもなんとか私たちを食べさせ、学校に行かせ、パートや夜勤をしている母の姿を見ればおねだりなんかできるはずなかった。
小学校高学年になってくると、だんだんカーストができてくる。家がお金持ちで、オシャレしてくる子たちだって出てくる。私と、友達2人は学校で飼育委員をしていた。三人とも動物が好きだったから、いつも飼育小屋に行っていた。貧乏でお下がりの服を着ている子、転校生、鳥が好きなちょっと変わった子。三人とも、もちろんイジメのターゲットになった。ちょうど鳥インフルエンザがあったときで、「近づいたら鳥インフルエンザがうつる」「くさい」「きもい」など言われた。席替えのときも私たちが近くの席になったら「最悪」「ありえんのやけど」と言われた。極め付けは男子生徒が私の給食のスープにスプーンを入れようとして、他の人が「何してんの?」って言ったら「罰ゲームやけん」と言ったことだった。担任も注意するくらいで、なんの意味もない。教室には居場所がなかった。だから休み時間も放課後も飼育小屋に行っていた。
家もおかしい。学校もおかしい。だんだんと私は気持ちがおかしくなっていっていた。
リストカットに興味を持ち、試してみたのはこの頃だったと思う。
私の中学はエスカレーター式で、3つの小学校から1つの中学に上がるマンモス校だった。中学ではスクールカースト下層だった。見学せずに卓球部に入ったら、そこは学年でもカースト上位の集団な上に小学校の頃私をバカにしていた子までいた。そうしてバカにされたりからかわれたり、嫌がらせを受けながら半年で部活を辞めた。友達はいたけどバラバラだったりして、教室では本を読んで過ごすことが多かった。その頃かなりのあがり症で、授業で当てられたり生徒から突然話かけられるとすぐ赤くなったり声が出なかったりして、それもからかいの的になった。
中学は10クラスあり、それぞれカーストやいじめなどの問題があったらしい。登校拒否になった子もいた。私は登校拒否だけはなぜだかできなかった。親に私が学校でこんな目にあってると言ったらどうなるんだろうと思い、怖くて黙っていた。黙って耐え続けた。親には何も問題ないと伝えていた。思えば、私は何を守りたかったんだろうか。私が耐えていれば何も起きなくて済むと、自分が苦しむだけで済むと思ってたのかもしれない。
中学である女の子と友達になった。親友だった。その子の家によく遊びに行き、泊まりもしていた。姉妹のようだった。その子が入っていた演劇部に2年から入り、その中学校では演劇部=オタクでキモいという扱いだったので、さらにバカにされたけど、先輩も後輩も仲が良く、居心地が良かった。一緒に塾に通い、一緒の高校に入った。だけど、それがダメだった。
私は中学3年の頃から、「空気を読む」術を手に入れはじめた。「いじられキャラ」「天然キャラ」「面白キャラ」といった様々な仮面を作り、そして素の自分を仮面に隠し、受け流すことを覚えはじめた。カーストという概念から外れる術を掴みはじめた。学校という環境を耐えやすくなるようにと。

高校に上り、親友Aとは同じクラスになった。もちろん大喜びだった。私は高校では明るく振る舞っていた。友達もそこそこできたし、公立高校だったのでバカにしたりイジメをする人種は少なかった。けれど、もともと暗いタイプの人間が常に明るく振舞っていると疲れる。リストカットの頻度が少しずつ増えていった。そのころは浅いためらい傷程度だったから、なんのことはないと思っていた。
無理して明るく振る舞ったところで、結局本当に明るい人間には見抜かれてしまう。というより、見抜かれているんじゃないかという疑心暗鬼が、余計に私を苦しませていた。

あるとき、親友と好きな人が被ってしまった。そこから全ておかしくなった。結果として、私は彼女にひどいことをしてしまった。今になれば大したこともない理由で、彼女が先に告白したというだけで、振られているし、特に彼女が悪いことをしたわけではない。なのに私は傷ついたから、という理由で、彼女の目の前でリストカットを行い、彼女にその手当をさせた。今、書いてるだけでも自分が憎く思える。彼女はきっと心に傷を受けただろう。そう思うと当時の自分を殺したくなる。私は彼女にボーダー的な依存をしていたのだろうと思う。ひどいことも色々いっていたと思う。わがままばかり言っていた。家庭内でわがままを言えない反動のようだった。その後もなぜかクラスが変わるまで一緒に行動していた。私は彼女の心の悲鳴を聞いてあげるべきだった。身を引くべきだった。私は執着心が強く、その子のブログやホームページはチェックしていたし、教えてもらってないブログでも探し当てるのが得意だった。クラスが変わり、新しい友達ができた。わたしは美術部に入っており、その友達もいたからその子とは疎遠になるはずだったが、兼部で生徒会に入ることになり、その親友Aもその部活にいた。私はまた仲良くできると思っていたが、彼女は違った。表面上は仲が良かった。だが、あるきっかけで彼女の裏ブログを見つけてしまい、そこに大量の私への悪口が書いてあるのを見つけた。彼女が私にされたことを考えれば、それは仕方ないことだと今ではわかるが、それから私はどんどん精神的におかしくなっていった。他人に与えた苦しみと自分の苦しみが心の中に巣喰い、自分を罰するようにひどくリストカットを行うようになった。遅刻や早退、保健室にいることも多かった。授業中周りの私語がノイズに聞こえて耐えきれずに授業中保健室に行くといい教室を出て、その道中のトイレの個室の中で手首を切ることもあった。怒りと憎しみと悲しみと虚無感が毎日自分の中を這いずり回るようで、ああ、家に帰ればリストカットできるなぁ、と思いながらバスに乗って帰っていた。私の学年はリストカットをしている生徒が多かった。友達にもリストカットをしている人がいたり、保健室で出会って友達になることもあった。大抵、みな明るく優しいが、片親や離婚など、家庭などで問題がある子ばかりだった。しかし、人がリストカットをしていると、なぜか競い合うようにリストカットをしてしまうような部分もあった。私のリストカットはどんどんひどくなる一方だった。左腕全体、肘の上、膝、太もも、足首に至るまで全て切った。もともとかさぶたをはがしたり、デキモノを芯が出るまでえぐり出したり、痛いことや血が出ることに対して抵抗がなかった。自分の体を傷つけることは自分の暴力的な感情、怒りの感情、悲しみの感情を痛みで表現し、傷と血で可視化する。家族や他者への敵意を自分で発散することもできるし、自分を自分で罰することもできる、一番ちょうどいい行為という感覚で行っていた。もちろんそこまでエスカレートすれば、家族にも気づかれた。傷跡がひどくて夏場は暑いのに夏服の上にカーディガンを着ていたし体育でも冬服を着なければならなかった。そうしていたら近しい友達だけではなく、よく知らない先生や生徒にも気づかれる。10年前にあたる当時はリストカットなどは当然認知に乏しいものだったので、奇異な目に晒されることも多々あった。でもその時は気づかれてもいいと思ったし、むしろ気づいて欲しかったんだと思う。製図用のカッターが一番切れ味がいいと気づいてからはそれを机に隠し、勉強しているフリをして体を切りつけていた。毎日そうしていたらそれが当たり前になってしまって、強い痛みが欲しくなって傷の深さも数も増えるばかりだった。家族にもなんども問い詰められたが、その時は家族に対して意見や自分の思いを伝えることができなくなっていた。今でもそうだが、私は感情が高ぶると頭の中で一気に思考が押し寄せてきて、言葉が出せなくなり、黙るか、適当に嘘をついてその場を終わらせてしまう。私は自傷行為をする人の多くは感情を形にすることが何らかの形で上手に出来ないのだろうと思う。

飲んだあとの感想としては、恐ろしく苦しい体験だったけど、確かにすごかった。日常では考えられない超常現象が起きていたようなものだったから。
自分の脳で起きていたことを録画して人に見せたいくらいにはすごかった。
吐き気止めを飲んで、バッド回避に気をつけてリラックスして望めばもっと楽しかったのかな〜と思った。

でも、多分私はこういった類のものが効きやすいのだと思う。ハイプロンでも一回変なものを見たことがあったし。だからこそ、しばらくはやめておこうと思う。クセになったらなんかやばい。

アカシアで自分の精神面が変わるとかいう話もあるけど、そうでもない。少しは穏やかになったのかな?あと人間関係への固執はなくなったかも。
大学の交友関係だいたい興味なくなったというか、距離を置いた。
これはやっておかなきゃと思ってたんだけど、タイミング的にちょうどよかった。

書を捨てよ旅に出よう

アヤワスカアナログ体験記加筆修正



まず、私は普段服薬はルネスタ程度。眠剤以外の薬服用経験はほんの少し。そして酒にも弱く代謝が早い。それがキマるきっかけだったのかなーと思った。

アカシア5g程度とクエン酸を半サジ、400mlの水で煮詰め、その最中にオーロリクスを服用。ちなみに煮詰めている時に上履きのゴムのようなにおいがした。ワンカップ分になるまで中強火で煮詰め、コーヒーフィルターでこしたお茶にオーロリクスを砕いて入れて冷まして完成。

怖かったのでその3分の2くらいの量を飲み、本当に効くのか〜?と半信半疑になりながらもベッドに横になり、目を閉じる。

少し時間がたつと、目を閉じた次回の真ん中に虹色の線が見え始める。見間違いか思い込みだと思っていた。
ずっと見てたら虹の線が右上とかにも出始めて、黒い点のようなものも見え、動いているように見え始める。「おや?」と思っているとここで吐き気を催し、トイレに向かうと歩く感覚がおかしくなっていることに気づく。
力が入りにくいような。そして、蛍光灯のランプがやけに黄色く見えるのを不思議に思いながらトイレに入り、私は吐くのは苦手なのでその時は吐かなかったが、トイレの壁紙のもようが動いていること、白いはずのトイレットペーパーが青く見えていることに気づいた。1つ1つ、異変を発見していくのがとてもリアルなかんじがした。

それにびっくりして部屋に戻ると、普段なら気にならないカーペット模様が、そしてその中でも青色がいつもよりはっきり見え出して、おかしいなと思って目を閉じたらもうそこは幻覚世界になっていた。サイケデリックというのだろうか、
黒背景にネオンカラーのピンク、赤、緑、青、紫の有象無象の図形がズラーっと流れていったり、黒背景の小さないくらみたいなのが波打ちながらたくさん迫ってきたり、幽霊のような人の顔が浮かんだり…
そこで「怖い」と思ったから結果バッドに入ったのかも。
私はアカシアに関する前知識が少なく、「シャーマンが使う幻覚が見れるお茶」という認識しかなかったので。
よもや自分に効くとも思ってなかった。
だから、突然の事態に混乱した。
あと、目を閉じた時の視界(っていうのは変かもしれないけど)がやけに大きい。
普通目を閉じると目を閉じた部分の暗さだと思うが、それがなぜかものすごく広い。
広くて、縦横無尽に模様や色や形や謎のイメージが動き回り、変化をし続ける。宇宙みたいって表現するとチープだけど、本当にそんなかんじりチカチカするし吐き気も倦怠感もひどく、「怖い」と言って目を開けた。とにかく怖いと思ってしまった。

目を開けると、開けたときの視界も変わっていました。壁や天井に模様が浮かび上がり、ベットシーツの陰影が異様にはっきりしている。おまけに動く。色の見え方も普段とまるで違う。青っぽかったり黄色っぽかったり。

心配そうに様子を伺っていた恋人が、「怖い」と言う私に「楽しいって思って!」としきりに言ってきていたが、後なってその重要性がわかった。
楽しいと思わなければこの幻覚は楽しいイメージにはならないということだったのだろう。そのときはいっぱいいっぱいで楽しいと考えようとしても、一瞬で幻覚の強さの恐怖に持っていかれてしまう。このとき楽しいを維持できなかったからバッドになったのだと思う。
大丈夫?と手を握ってくる恋人の手がものすごく熱く感じる。自分の手がものすごく冷たく、ぷるぷる震えているのがわかった。
自分の手にも恋人の手にも模様が浮かび始め、恋人の顔がなんだか違う風に見えた。
びっくりして目を閉じても目を閉じた世界はギラギラのチカチカ、手で目を覆い隠しても同じことで、目を開けてもまた視界がおかしい。逃げ場がない、と感じた。

するとまた吐き気が現れトイレに行こうとするが、身体の感覚が変になり、力が入らない。恋人が抱えて連れて行ってくれるが、温度や触れている感じ方も遠近感もおかしい。
なんというか、抱えられているのが自分ではないような感覚だった。
一枚フィルターがあるみたいな。それでいてやけに近く感じるような。目を閉じても開けても続く幻覚に苛まれ、歩かせてもらいながら移り変わるいつもの風景が幻覚にめちゃくちゃに荒らされているのを眺めながらトイレにたどり着く。
嘔吐や排泄の音を恋人に聞かれたくないという意地だけは失わず、離れた場所にいてくれとお願いする。そしてトイレの個室にこもり、へたりこむ。私は吐くのは得意ではない。酒の席でも滅多に吐かないし、吐きそうになっても我慢する。
だが、アヤワスカによる吐き気はそんな我慢できるようなものではなかった。吐き気を耐えていたところでトイレの模様、便器、床の色彩がぐちゃぐちゃになってるし、動いている。目を閉じても例のネオンカラーのチカチカ。
迫り上がるような吐き気に促され、喉に指を突っ込んでなんとか嘔吐する。一度嘔吐できたら二、三回吐けた。「浄化」というらしいがどうなのだろう。でもたしかにここまで耐えられない吐き気はなかなかない。汚いはずの自分の吐瀉物がキラキラとして見えたのには少し笑えた。
吐き終えて便座に座り、目の前のウゾウゾと動いている壁の模様を見ていると、目が開いている状態なのに、黄色い光る線で模様が浮かび上がり始めた。触っても消えない。魔法のようだった。魔法ってもしかしたらキマってる人間が考えたのかも。換気扇の音が近い。ゴーゴー大きく聞こえる。
目を閉じると幾何学模様に混じって、平面の鉄でできた門の黒とピンクのシルエットがあり、ずっと見ていると人のシルエットが出てきた。アニメシアターのようだった。もう少し見たかったが、苦手な黒と赤のいくら的物体の集団がまた下から迫ってきたから目を開ける。
自分の身体を見た。黄色い線の模様が浮かんでいる。もしや、と思って左腕を見た。わたしの左腕には、手首から肘にかけて無数の自傷跡がある。10年前のものだから白く浮かんでるだけなのだが。
その自傷跡が、動いている。エスカレーターのように上に下に。愉快なのか驚きなのかわからない感情になり、吐けた爽快感からか若干調子を戻し、ふらつきながらもトイレをでて口をゆすぎ、恋人にそのことを報告した。このときは少し愉快だった気がする。
ぐにゃぐにゃ回る視界の中で、まさかここまでとは思わなかったなぁとか、なんでわたしがキマっちゃうんだろうなぁとかそういう他愛もない話をした気がする。恋人に自分が見ている風景を伝えたくて目を閉じてサイケを見るが、どうもうまく伝えられない。目を開けると恋人の顔に模様が浮かんでいるのが面白いと感じた。

二度目の吐き気を覚え、再びトイレへ向かう。もう自力では歩けなくなっていた。全身の感覚がおかしい。この辺りからバッドに入っていたと思う。もう吐くものも少ないのに嘔吐。吐瀉物にたくさんの目がある。笑われていると感じた。
ただのトイレの個室なのに、膨大な空間であるように感じる。壁に曼荼羅のような模様が見える。自分の身体を失ったような錯覚があった。
もはや立ち上がる力もなく、恋人を呼んだ。
幻覚でぐにゃぐにゃな視界の中で、心配した恋人がドアを開けた。
このタイミングだったかはわからないが、恋人が抱きかかえてくれる温度が熱く、離れていた現実感を得、恋人が優しくなだめてくれるも、しかし幻覚に襲われ続ける恐怖に突然感情のタガが外れて「怖い」と泣き始めてしまった。急に感情が暴発して突然涙が出るかんじ。ちなみにこのあとのロードーズでも泣いた。私はお茶をやると泣上戸になるのだろうか。ちなみに酒で泣上戸になったことはない。

だが、怖いと泣いても涙が滲むとそれがさらに光の粒になり幻覚を増長させる。もはや眼に映るものも目を閉じていても全てが動いている。色と形が暴力となって襲ってくるかんじといえる。脳が壊れると思って、ひたすら「助けて」「なんで私なの」と心の中で叫んでいた。
恋人はルネスタで落とそうと提案してくれたが、吐き気と酩酊感から何かを飲める状態ではなかったので断ったら、恋人はバッド対策にプリザーブドフラワーを持ってきてくれた。

なんと、とても驚くべきことに、全て動いている視界の中で、花は一切動かなかったし、模様も浮かんでないのだ。それどころか、青い薔薇の青さが非常に美しく感じた。こんなに美しいものがあるのかと感動した。
完全に「おはなきれい…」状態だった。少し冷静さを取り戻し、ベッドまで連れて行ってもらい、花を見ながら寝そべる。身体の感覚がなく、なんども訪れているはずの恋人の部屋が別の空間のように感じた。色もそうだが、遠近感がおかしい。異様に広く感じるのだ。ものの見え方が変わっていた。
しかし、まずバッドとかバッド避けとかの意味をわかってなかったのがまずかったのか、もう遅かったのかわからないが、それでもバッドは終わってはくれなかった。

花を見ていても、花以外の、例えば額縁や壁に模様が入り、うごめくのは変わらないし、吐き気や身体の震えがひどく、それを見ないようにすることができなくなっていった。目を閉じると強烈なネオンカラーの線や丸、図形たちが踊る。ここくらいから目を開けている状態での幻覚がはっきりしてきて、シルエット状態の下下らしい色合いのムカデのような虫たちが視界の隅に見え始める。
ふとバイトのことが頭をよぎった。私はいわゆる夜職をしており、男性相手の接客のバイトなのだが、今日はバイト行けないな、と思った瞬間蛇や女のシルエットやが現れ、視界を這いずり回られた。
私は、なんとなくだが蛇は男性のイメージなのではないかと思う。私は根底として男性嫌悪がある。男が嫌い、ということではなく、いわゆる家庭環境や過去のトラウマ、そして皮肉にも自分の仕事内容からか男性性というもの対する深層心理での不信感や憎悪がある。だから蛇としてイメージ化されたのではないか。
そして高い女の声のネガティヴな幻聴が聞こえ始める。「生きててよかったの?」「生まれてこなければよかった?」「最低な人間なのにね」などといった。
幻覚と幻聴に苛まれながら、「やめてくれ」「助けてくれ」と思った。恋人に泣きながら「助けて」と言った。恋人は落としのためのワイパックスを用意してくれたが、混乱と吐き気とでやはり飲むことができない。身体が何も受け付けない状態だった。
最早寝転んでいても楽にはなれず、視界が壊れてしまったので花も効果が薄い。再び吐き気と尿意を催し、トイレへ向かったが、先ほどトイレに行くときとはもう何もかも違う。現実ではない世界を見ているようだった。目を開けていたのか閉じていたのかもわからない。
なんとかおしっこをしようとするが、視界全ては幻覚になり、謎の牧場や牛や、女の子のシルエットや仏、百鬼夜行のようなイメージが浮かんできて、しかも体の感覚も曖昧なためなかなか排尿できない。
ようやっと出せたかと思ったら、目の前に大きなまるっこいボトルが現れ、おしっこを出した量と同じだけ液体が満たされていくのが見えた。後々調べると「ビジョン」とか「イメージ」とかいうらしいが、まさかおしっこがビジョン視できるとは…
吐くために便器の前にへたり込み、また少し吐く。吐瀉物がなぜか白っぽい綺麗なものに見える。そしてトイレの個室を見渡すが、そこはもういつものトイレではなく、青を基調とした幾何学的な模様をした亜空間になっていた。換気扇の音がかなり大きく聞こえる。それに混じって、なぜか民謡?のような歌が聞こえてきた。
もう肉体と空間の境界がわからない。このトイレの個室がやけに広大で、自分がどこにいるのかさえわからない。人間界ではない場所へと、これがいわゆる「トリップ」とよばれるものだったのだろうか。なぜ「トリップ」なのか意味がわかった。
別世界に旅をするとはそういうことだったんだと今にして理解した。
ここはどこなんだ、これはなんなんだ、戻りたいと思っていたが、戻りたいと考えていたということは、自分はもう現世にはいないようなものだと思っていたのだろう。
幽体離脱に近いような。それでも肉体の寒気や嘔吐感の苦しみはある。幻覚や幻聴はいっそう激しくなる。仏のような様々な開眼幻視、自分の体に浮かぶ謎の模様が見える。目を閉じても続く色彩の嵐。バッドじゃなければ、そして体の不快感さえなければ楽しむことができたんだろうな、と今にして思う。「もう解放してくれ」と思い、死すら頭をよぎった。このまま死ぬんじゃないか、救急車呼んだほうがいいのか、と思った。「戻りたい」「戻りたい」と心の中で念じ続けた。それでも戻れない。
もはや感情は怒りになった。恋人が扉をあけてワイパックスを持ってきてくれたが、やはり飲める状態じゃない。

もう一度吐けるかチャレンジしようとしたが、吐く気力も起きず、ただぼんやりと便座や便器があるだろう場所を見ていたが、あることをふと思った。「こんなめちゃくちゃにされてるけど、こんなの、ただお茶飲んだだけじゃん」と。かろうじて動いた右手でシッシと払うような動作をしながら、

「こんなものはただのお茶だ!」と心の中で叫んだら、なんと一気に幻覚が晴れた。驚くほどのスピードで視界がもとの、「いつものトイレ」に近づいていく。幻覚も少しずつ消えていく。アニメみたいだな、と思った。

ほっと安堵して、恋人を再び呼ぶ。「戻れた!」と報告すると、恋人もすごく安心した様子で、「よかった〜」と言う。

視界は戻ったが、やはり身体の感覚は変わらず、異常に体が冷え切っており、震えも止まらなかった。
まだ立てなかったのでその場でへたりこみ、口をぬぐうためにトイレットペーパーをひっぱる。トイレットペーパーをただ引っ張ってるだけなのに、やけにその動きが明確に見える。なんというか、細かい動きがやけに鮮明に見えた。
恋人が持ってたスマホの画面がやけに色鮮やかな光を放っていた。そして驚くべきことを知ることになる。時間を聞いた。

1時間くらいしか経過していない。
私の感覚としては、3時間、それよりもっとずっと長かったように感じたはずだった。それが一時間くらいしか経ってないことにめちゃくちゃ驚いた。たしか効果は3時間くらいと聞いた気がするが、本当に三時間まで幻覚が終わらなかったらどうなってしまっていたのだろう。

恋人が一息つくためにタバコを吸うと、なんだか匂いがいつもと違うように感じた。ゴム臭いような。嗅覚もやられている。そしてようやく吐き気も落ち着き、水をもらうと、なんだか水が妙に甘い。甘すぎる。砂糖入れたのかってくらい甘い。味覚もやられていたとは思わなかった。
つまり、私はアカシア茶によって五感すべてを狂わされてしまったのだ。
(余談だけどテニプリで幸村がこんな技使えるよね)

ワイパックスを4錠飲み、少しずつ身体の感覚も取り戻し、トイレットペーパーを見ると青く見えていたトイレットペーパーが白に戻っていてホッとした。
まだ少しふらつきながらも部屋に戻る。もう幻覚はなくなったようだ。ワイパックスすごい。
恋人も救急車呼ぶのを考えたようで、戻れてよかった…と再確認。

少し身体のだるさはあるが、ちゃんと歩けるようになったのでタバコを吸いにいくと、タバコがものすごくおいしく感じた。終わってみると、かなり万能感がある。人間関係なんてどうでもよくなったり、いわゆるハイな状態になっていた。
あと、視界がやけにクリアに見える。特に植物や、
マンション、大型パーキングの骨組みとか、そういった無機物のものが遠くのものでもやけにクッキリ見えるようになったような気がする。これはアカシアを飲んだ後数日間続いた。今もそうかも。

後から考えれば、恋人からすればいつもの部屋で私が錯乱しているシュールな光景だっただろうなぁ…めちゃくちゃ心配かけてしまって申し訳ない。

アヤワスカ体験録

アヤワスカ 体験記
アカシア
まず、私は普段服薬はルネスタ程度。眠剤以外の薬服用経験はほんの少し。そして酒にも弱く代謝が早い。それがキマるきっかけだったのかなーと思った。

アカシア5g程度とクエン酸を半サジ、400mlの水で煮詰め、その最中にオーロリクスを服用。ちなみに煮詰めている時に上履きのゴムのようなにおいがした。ワンカップ分になるまで中強火で煮詰め、コーヒーフィルターでこしたお茶にオーロリクスを砕いて入れて冷まして完成。

怖かったのでその3分の2くらいの量を飲み、本当に効くのか〜?と半信半疑になりながらもベッドに横になり、目を閉じる。

少し時間がたつと、目を閉じた次回の真ん中に虹色の線が見え始める。見間違いか思い込みだと思っていた。
ずっと見てたら虹の線が右上とかにも出始めて、黒い点のようなものも見え、動いているように見え始める。「おや?」と思っているとここで吐き気を催し、トイレに向かうと歩く感覚がおかしくなっていることに気づく。
力が入りにくいような。そして、蛍光灯のランプがやけに黄色く見えるのを不思議に思いながらトイレに入り、私は吐くのは苦手なのでその時は吐かなかったが、トイレの壁紙のもようが動いていること、白いはずのトイレットペーパーが青く見えていることに気づいた。1つ1つ、異変を発見していくのがとてもリアルなかんじがした。

それにびっくりして部屋に戻ると、普段なら気にならないカーペット模様が、そしてその中でも青色がいつもよりはっきり見え出して、おかしいなと思って目を閉じたらもうそこは幻覚世界になっていた。サイケデリックというのだろうか、
黒背景にネオンカラーのピンク、赤、緑、青、紫の有象無象の図形がズラーっと流れていったり、黒背景の小さないくらみたいなのが波打ちながらたくさん迫ってきたり、幽霊のような人の顔が浮かんだり…
そこで「怖い」と思ったから結果バッドに入ったのかも。
私はアカシアに関する前知識が少なく、「シャーマンが使う幻覚が見れるお茶」という認識しかなかったので。
よもや自分に効くとも思ってなかった。
だから、突然の事態に混乱した。
あと、目を閉じた時の視界(っていうのは変かもしれないけど)がやけに大きい。
普通目を閉じると目を閉じた部分の暗さだと思うが、それがなぜかものすごく広い。
広くて、縦横無尽に模様や色や形や謎のイメージが動き回り、変化をし続ける。宇宙みたいって表現するとチープだけど、本当にそんなかんじりチカチカするし吐き気も倦怠感もひどく、「怖い」と言って目を開けた。とにかく怖いと思ってしまった。

目を開けると、開けたときの視界も変わっていました。壁や天井に模様が浮かび上がり、ベットシーツの陰影が異様にはっきりしている。おまけに動く。色の見え方も普段とまるで違う。青っぽかったり黄色っぽかったり。

心配そうに様子を伺っていた恋人が、「怖い」と言う私に「楽しいって思って!」としきりに言ってきていたが、後なってその重要性がわかった。
楽しいと思わなければこの幻覚は楽しいイメージにはならないということだったのだろう。そのときはいっぱいいっぱいで楽しいと考えようとしても、一瞬で幻覚の強さの恐怖に持っていかれてしまう。このとき楽しいを維持できなかったからバッドになったのだと思う。
大丈夫?と手を握ってくる恋人の手がものすごく熱く感じる。自分の手がものすごく冷たく、ぷるぷる震えているのがわかった。
自分の手にも恋人の手にも模様が浮かび始め、恋人の顔がなんだか違う風に見えた。
びっくりして目を閉じても目を閉じた世界はギラギラのチカチカ、手で目を覆い隠しても同じことで、目を開けてもまた視界がおかしい。逃げ場がない、と感じた。

するとまた吐き気が現れトイレに行こうとするが、身体の感覚が変になり、力が入らない。恋人が抱えて連れて行ってくれるが、温度や触れている感じ方も遠近感もおかしい。
なんというか、抱えられているのが自分ではないような感覚だった。
一枚フィルターがあるみたいな。それでいてやけに近く感じるような。目を閉じても開けても続く幻覚に苛まれ、歩かせてもらいながら移り変わるいつもの風景が幻覚にめちゃくちゃに荒らされているのを眺めながらトイレにたどり着く。
嘔吐や排泄の音を恋人に聞かれたくないという意地だけは失わず、離れた場所にいてくれとお願いする。そしてトイレの個室にこもり、へたりこむ。私は吐くのは得意ではない。酒の席でも滅多に吐かないし、吐きそうになっても我慢する。
だが、アヤワスカによる吐き気はそんな我慢できるようなものではなかった。吐き気を耐えていたところでトイレの模様、便器、床の色彩がぐちゃぐちゃになってるし、動いている。目を閉じても例のネオンカラーのチカチカ。
迫り上がるような吐き気に促され、喉に指を突っ込んでなんとか嘔吐する。一度嘔吐できたら二、三回吐けた。「浄化」というらしいがどうなのだろう。でもたしかにここまで耐えられない吐き気はなかなかない。汚いはずの自分の吐瀉物がキラキラとして見えたのには少し笑えた。
吐き終えて便座に座り、目の前のウゾウゾと動いている壁の模様を見ていると、目が開いている状態なのに、黄色い光る線で模様が浮かび上がり始めた。触っても消えない。魔法のようだった。魔法ってもしかしたらキマってる人間が考えたのかも。換気扇の音が近い。ゴーゴー大きく聞こえる。
目を閉じると幾何学模様に混じって、平面の鉄でできた門の黒とピンクのシルエットがあり、ずっと見ていると人のシルエットが出てきた。アニメシアターのようだった。もう少し見たかったが、苦手な黒と赤のいくら的物体の集団がまた下から迫ってきたから目を開ける。
自分の身体を見た。黄色い線の模様が浮かんでいる。もしや、と思って左腕を見た。わたしの左腕には、手首から肘にかけて無数の自傷跡がある。10年前のものだから白く浮かんでるだけなのだが。
その自傷跡が、動いている。エスカレーターのように上に下に。愉快なのか驚きなのかわからない感情になり、吐けた爽快感からか若干調子を戻し、ふらつきながらもトイレをでて口をゆすぎ、恋人にそのことを報告した。このときは少し愉快だった気がする。
ぐにゃぐにゃ回る視界の中で、まさかここまでとは思わなかったなぁとか、なんでわたしがキマっちゃうんだろうなぁとかそういう他愛もない話をした気がする。恋人に自分が見ている風景を伝えたくて目を閉じてサイケを見るが、どうもうまく伝えられない。目を開けると恋人の顔に模様が浮かんでいるのが面白いと感じた。

二度目の吐き気を覚え、再びトイレへ向かう。もう自力では歩けなくなっていた。全身の感覚がおかしい。この辺りからバッドに入っていたと思う。もう吐くものも少ないのに嘔吐。吐瀉物にたくさんの目がある。笑われていると感じた。
ただのトイレの個室なのに、膨大な空間であるように感じる。壁に曼荼羅のような模様が見える。自分の身体を失ったような錯覚があった。
もはや立ち上がる力もなく、恋人を呼んだ。
幻覚でぐにゃぐにゃな視界の中で、心配した恋人がドアを開けた。
このタイミングだったかはわからないが、恋人が抱きかかえてくれる温度が熱く、離れていた現実感を得、恋人が優しくなだめてくれるも、しかし幻覚に襲われ続ける恐怖に突然感情のタガが外れて「怖い」と泣き始めてしまった。急に感情が暴発して突然涙が出るかんじ。ちなみにこのあとのロードーズでも泣いた。私はお茶をやると泣上戸になるのだろうか。ちなみに酒で泣上戸になったことはない。

だが、怖いと泣いても涙が滲むとそれがさらに光の粒になり幻覚を増長させる。もはや眼に映るものも目を閉じていても全てが動いている。色と形が暴力となって襲ってくるかんじといえる。脳が壊れると思って、ひたすら「助けて」「なんで私なの」と心の中で叫んでいた。
恋人はルネスタで落とそうと提案してくれたが、吐き気と酩酊感から何かを飲める状態ではなかったので断ったら、恋人はバッド対策にプリザーブドフラワーを持ってきてくれた。

なんと、とても驚くべきことに、全て動いている視界の中で、花は一切動かなかったし、模様も浮かんでないのだ。それどころか、青い薔薇の青さが非常に美しく感じた。こんなに美しいものがあるのかと感動した。
完全に「おはなきれい…」状態だった。少し冷静さを取り戻し、ベッドまで連れて行ってもらい、花を見ながら寝そべる。身体の感覚がなく、なんども訪れているはずの恋人の部屋が別の空間のように感じた。色もそうだが、遠近感がおかしい。異様に広く感じるのだ。ものの見え方が変わっていた。
しかし、まずバッドとかバッド避けとかの意味をわかってなかったのがまずかったのか、もう遅かったのかわからないが、それでもバッドは終わってはくれなかった。

花を見ていても、花以外の、例えば額縁や壁に模様が入り、うごめくのは変わらないし、吐き気や身体の震えがひどく、それを見ないようにすることができなくなっていった。目を閉じると強烈なネオンカラーの線や丸、図形たちが踊る。ここくらいから目を開けている状態での幻覚がはっきりしてきて、シルエット状態の下下らしい色合いのムカデのような虫たちが視界の隅に見え始める。
ふとバイトのことが頭をよぎった。私はいわゆる夜職をしており、男性相手の接客のバイトなのだが、今日はバイト行けないな、と思った瞬間蛇や女のシルエットやが現れ、視界を這いずり回られた。
私は、なんとなくだが蛇は男性のイメージなのではないかと思う。私は根底として男性嫌悪がある。男が嫌い、ということではなく、いわゆる家庭環境や過去のトラウマ、そして皮肉にも自分の仕事内容からか男性性というもの対する深層心理での不信感や憎悪がある。だから蛇としてイメージ化されたのではないか。
そして高い女の声のネガティヴな幻聴が聞こえ始める。「生きててよかったの?」「生まれてこなければよかった?」「最低な人間なのにね」などといった。
幻覚と幻聴に苛まれながら、「やめてくれ」「助けてくれ」と思った。恋人に泣きながら「助けて」と言った。恋人は落としのためのワイパックスを用意してくれたが、混乱と吐き気とでやはり飲むことができない。身体が何も受け付けない状態だった。
最早寝転んでいても楽にはなれず、視界が壊れてしまったので花も効果が薄い。再び吐き気と尿意を催し、トイレへ向かったが、先ほどトイレに行くときとはもう何もかも違う。現実ではない世界を見ているようだった。目を開けていたのか閉じていたのかもわからない。
なんとかおしっこをしようとするが、視界全ては幻覚になり、謎の牧場や牛や、女の子のシルエットや仏のようなイメージが浮かんできて、しかも体の感覚も曖昧なためなかなか排尿できない。
ようやっと出せたかと思ったら、目の前に大きなまるっこいボトルが現れ、おしっこを出した量と同じだけ液体が満たされていくのが見えた。後々調べると「ビジョン」とか「イメージ」とかいうらしいが、まさかおしっこがビジョン視できるとは…
吐くために便器の前にへたり込み、また少し吐く。吐瀉物がなぜか白っぽい綺麗なものに見える。そしてトイレの個室を見渡すが、そこはもういつものトイレではなく、青を基調とした幾何学的な模様をした亜空間になっていた。換気扇の音がかなり大きく聞こえる。それに混じって、なぜか民謡?のような歌が聞こえてきた。
もう肉体と空間の境界がわからない。このトイレの個室がやけに広大で、自分がどこにいるのかさえわからない。人間界ではない場所へと、これがいわゆる「トリップ」とよばれるものだったのだろうか。なぜ「トリップ」なのか意味がわかった。
別世界に旅をするとはそういうことだったんだと今にして理解した。
ここはどこなんだ、これはなんなんだ、戻りたいと思っていたが、戻りたいと考えていたということは、自分はもう現世にはいないようなものだと思っていたのだろう。
幽体離脱に近いような。それでも肉体の寒気や嘔吐感の苦しみはある。幻覚や幻聴はいっそう激しくなる。仏のような様々な開眼幻視、自分の体に浮かぶ謎の模様が見える。目を閉じても続く色彩の嵐。バッドじゃなければ、そして体の不快感さえなければ楽しむことができたんだろうな、と今にして思う。「もう解放してくれ」と思い、死すら頭をよぎった。このまま死ぬんじゃないか、救急車呼んだほうがいいのか、と思った。「戻りたい」「戻りたい」と心の中で念じ続けた。それでも戻れない。
もはや感情は怒りになった。恋人が扉をあけてワイパックスを持ってきてくれたが、やはり飲める状態じゃない。

もう一度吐けるかチャレンジしようとしたが、吐く気力も起きず、ただぼんやりと便座や便器があるだろう場所を見ていたが、あることをふと思った。「こんなめちゃくちゃにされてるけど、こんなの、ただお茶飲んだだけじゃん」と。かろうじて動いた右手でシッシと払うような動作をしながら、

「こんなものはただのお茶だ!」と心の中で叫んだら、なんと一気に幻覚が晴れた。驚くほどのスピードで視界がもとの、「いつものトイレ」に近づいていく。幻覚も少しずつ消えていく。アニメみたいだな、と思った。

ほっと安堵して、恋人を再び呼ぶ。「戻れた!」と報告すると、恋人もすごく安心した様子で、「よかった〜」と言う。

視界は戻ったが、やはり身体の感覚は変わらず、異常に体が冷え切っており、震えも止まらなかった。
まだ立てなかったのでその場でへたりこみ、口をぬぐうためにトイレットペーパーをひっぱる。トイレットペーパーをただ引っ張ってるだけなのに、やけにその動きが明確に見える。なんというか、細かい動きがやけに鮮明に見えた。
恋人が持ってたスマホの画面がやけに色鮮やかな光を放っていた。そして驚くべきことを知ることになる。時間を聞いた。

1時間くらいしか経過していない。
私の感覚としては、3時間、それよりもっとずっと長かったように感じたはずだった。それが一時間くらいしか経ってないことにめちゃくちゃ驚いた。たしか効果は3時間くらいと聞いた気がするが、本当に三時間まで幻覚が終わらなかったらどうなってしまっていたのだろう。

恋人が一息つくためにタバコを吸うと、なんだか匂いがいつもと違うように感じた。ゴム臭いような。嗅覚もやられている。そしてようやく吐き気も落ち着き、水をもらうと、なんだか水が妙に甘い。甘すぎる。砂糖入れたのかってくらい甘い。味覚もやられていたとは思わなかった。
つまり、私はアカシア茶によって五感すべてを狂わされてしまったのだ。
(余談だけどテニプリで幸村がこんな技使えるよね)

ワイパックスを4錠飲み、少しずつ身体の感覚も取り戻し、トイレットペーパーを見ると青く見えていたトイレットペーパーが白に戻っていてホッとした。
まだ少しふらつきながらも部屋に戻る。もう幻覚はなくなったようだ。ワイパックスすごい。
恋人も救急車呼ぶのを考えたようで、戻れてよかった…と再確認。

少し身体のだるさはあるが、ちゃんと歩けるようになったのでタバコを吸いにいくと、タバコがものすごくおいしく感じた。終わってみると、かなり万能感がある。人間関係なんてどうでもよくなったり、